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大ナゴヤノート.
2019年06月26日

「ヤレコノ!ヤレコノ!ご安全に〜♪」踊ろうみなと祭で。港まちの人たちが盛り上げる祭の伝統

毎年7月になると、ひとつ楽しみなことがあります。

それは、「海の日名古屋みなと祭」で踊ること。

花火を見る、屋台で買い物する、もいいけれど、
一番の楽しみはたくさんの人と一緒に踊ること。
この5年ほど、港まちで踊りに参加して見つけた、祭の魅力のお話をします。

今年のみなと祭は、7月15日の海の日に開催されます。
みなと祭の魅力を余すことなく楽しむための参考になりましたら。

まずは、ちょっとだけ歴史のお話を。
みなと祭は、今年で73回目。戦後、1946年に名古屋港の発展を祈る「復興祭」として始まりました。名古屋を代表する花火大会が始まったのは1948年のこと。

名古屋港は日本一の総取扱貨物量を誇る貿易港です。当時から、名古屋市内と港をつなぐ臨港線が走り、大きな船で運ばれてきた貨物は電車で市内各所へと届けられました。港湾荷役で発展したまちならではの特徴が、みなと祭にも見られます。

かつて名古屋港の埠頭で行われた総踊りの様子

昔のみなと祭。江川線を山車が行くのは変わりません。

みなと祭は、始まりの頃から地元に暮らす人たちの手で支えられ、盛り上げられてきました。

みなと祭の「流し踊り」を見たことはあるでしょうか。

ガーデン埠頭に向けて江川線を北から南へ、地元町内会の踊り子さんたちが列をなして舞うパレードが、毎年夕方頃に見られます。白、青、黄色、緑など、町内ごとに違う浴衣も見どころのひとつです。流し踊りの曲目は、港で働く人たちの合言葉「ご安全に〜!」を唄った「みなとヤレコノ!」など。踊り子さんの中には、何十年と参加し続けている人もたくさんいます。まちの人たちによって踊り継がれてきた伝統を垣間見られるでしょう。

さらに、踊り子さんの列に続くのが各町内会の山車。ハレの日にぴったりな豪華で個性的な山車が順に登場し、太鼓や踊りでにぎやかします。山車を引き、太鼓を叩き、山車の屋根の上で踊る町内も。大人だけでなく、子どもたちも大活躍できるみなと祭の見せ場のひとつです。山車も、かつては三味線を弾く芸者さんを乗せていた荷馬車が、年を経るにつれて、地域の人の手作りで飾られ、引かれるようになったもの。これもまた、各町内で大切に守られてきた伝統です。

流し踊りの様子。各町内ごとに色とりどりの浴衣で。

流し踊りと山車のパレードが終わると、みなと祭の舞台は、ガーデン埠頭の「つどいの広場」へ。ここで各町内の太鼓の音に合わせて、踊り子さんたちが大きな4重の輪をつくる「総踊り」がおこなわれます。「名古屋丸八音頭」での入場に始まり、「みなと区音頭」「大名古屋音頭」などの定番から、「ダンシングヒーロー」などのモダンな曲まで全7曲。カラフルな浴衣の踊り子さんたちがつくる踊りの輪はとても壮大です。

一番外の輪には誰でも加わることができます。浴衣でも、洋服でもOK。総踊りが終わると、まもなく花火が打ち上がり始めます。踊りの熱気が残るつどいの広場から見上げた大空に、大輪の花火が次々に打ち上がる。最高の気持ちでみなと祭のフィナーレを迎えられる、一番の特等席だと個人的には思っています。

総踊りの様子。大きな踊りの輪ができます。

港のまちでは、7月になると毎夜アチコチから、踊りの曲や太鼓の音が聞こえてきます。みなと祭に向けて、各町内で練習が始まるのです。港まちに夏の訪れを告げる風物詩。大人も子どもも一緒に汗を流す。そうして、みなと祭の伝統は世代を超えて受け継がれています。

私は港まちに住んではいませんが、2014年から町内に加わり、流し踊りと総踊りにも参加させていただいています。きっかけは、みなと祭の伝統を知り、体験してみる大ナゴヤ大学の授業。「まちの人だけでなく、他所の人たちと一緒にみなと祭を盛り上げてはどうか」という港まちづくり協議会さんの提案で、2014年から希望者が各町内に参加できる流れができてきました。毎年、練習に行くとまちの人たちは気さくに声をかけてくれます。「今年も頑張りましょうね!」「踊りは覚えてる?いやぁ、まだまだだね」。時代の変化の中で新しく生まれた参加の仕方。みなと祭を支える人の輪に加われることをとても嬉しく思っています。

今年も6月に開かれた大ナゴヤ大学の授業。みなと祭の踊りを体験しました。

 

地元の人と同じ浴衣で踊らせてもらっています!

数年前のみなと祭の日にこんな話を聞きました。
「小さな頃から、お兄ちゃんたちが大きな太鼓を打つ姿がとってもカッコよくて、いつか自分も叩きたかった!今年それが叶ったんです!」

自分のまちに、憧れられるお兄ちゃんがいて、その人を目標に毎年参加する。すごく素敵ですよね。みなと祭の伝統が受け継がれる裏側のドラマをちょっとだけ覗かせていただきました。

「海の日名古屋みなと祭」へ行ったら、地元の人たちの熱の入った踊りや太鼓をぜひ見てみてください。そして、総踊りでは一緒に踊りましょう。輪になって踊る楽しさを体感したら、きっとまた来年も踊りに来たくなる、かも。

まちの人たちが大切につないできた伝統に気づくと、みなと祭はもっと楽しくなるはずです。

写真提供/港まちづくり協議会

小林優太

愛知県あま市出身。キャッチフレーズは「あま市と歴史とラッコを愛す」。普段は、コピーライターだったり、大学講師だったり、まちづくりに関わる人だったり。大ナゴヤ大学では、2012年からボランティアスタッフ、授業コーディネーターなどで活動。
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