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大ナゴヤノート.
2020年11月18日

みんなで上を向いて歩いたら、いつもと違う景色が待っていた
-友人たちと大湫宿の瓦をめぐる旅-

大ナゴヤノート.エディターであり“瓦を追うひと”でもあるわっきぃさん(脇田さん)の記事を読むようになって、1年以上の月日が経ちました。これまではまちなかに瓦があっても、ただ目に入るだけでなにも感じなかった私。しかし、わっきぃさんの記事を何本も読むうちに、まちを歩きながら瓦を観察するようになっていました。

先日、私は友人のシミズさん、スミカさんと、瑞浪市にある中山道の宿場町・大湫宿へ観光に行きました。この地域には昔ながらのまちなみが残っており、瓦屋根の家が多くあります。

これは大ナゴヤノート.で培った知識を友人のために活かすチャンス!そう捉えて、ふたりに瓦めぐりを提案したところ、「瓦メインでまちを観光するなんて面白そう!!」「いいですね。やってみましょう!」と快諾。さて、どんな瓦があるのでしょうか。

はじめにやってきたのは大湫宿内の文化を紹介している旧森川訓行家住宅。まずは、この家の屋根に注目してみます。

特に装飾が施されているわけでもない、よく見かける瓦屋根なので、ふたりはそこまで興味を持たないかなと思いましたが、シミズさんが「逆にシンプルだからこそ、屋根を守る本来の機能がしっかりと表れていますね」。機能性に着目するあたりに、メーカーに勤めているシミズさんらしさを感じます。

続いて見つけたのは民家の屋根にあったこちら。

はじめて見る形の瓦との遭遇です。でも言葉には詰まりません。以前、わっきぃさんから「浪を象っている瓦は、防火の意味を込めているんだよ」と聞きました。今回も浪のデザインのような気がします。さっそくそのことを話すと、

僕も瓦の丸い部分に「水」と書かれたものを見たことがあるんですよ。江戸時代って水は貴重だったから、雨乞いって意味もあるかと思ってました。

というシミズさん。なるほど、昔は水不足が度々起きて多くの人を悩ませていたという話を思い出せば、すごく納得感があります。

次にスミカさんが見つけたのはこの瓦。

私は「華やかなデザイン」としか思わなかったのですが、スミカさんはどうしてこれが気になったのでしょうか。

普段、まちなかでは全然見かけない珍しい瓦だなぁと。花や草がたくさん盛り出ていて、真ん中に紋章があるので、家を守ってる感じがするんです。

こういった細やかなところにまで目が行き届くのは、スミカさんの几帳面な性格の表れかもしれません。

他にも面白い瓦はないか探していたら、スミカさんが「あっ、これかわいい!ハクション大魔王みたい!!」と声をあげます。

スミカさんの視線の先には、なんだか不思議なキャラクター…?正体はよくわかりませんが、私たちは「キャラクター瓦」と呼んでみました。スミカさんはこの頭を傾けたような角度が心にグッときたようです。

日が暮れてきたので、来た道を戻りながら歩いていると、「あれは、なんでしょう…」シミズさんが指差す方を見上げたら、屋根の上に“出っ張り”がついているではありませんか。見渡すと他の家の屋根にも同じようなものがあります。

スミカさん「うーん。なんだろう」
シミズさん「魔除けかな」
私「なんだか、ちょんまげみたいだな。祭りのときになにかを取り付けるためのものじゃないかな」
3人であれこれ知恵を絞りますが、結局、わからずじまいでした。
帰り道で瓦めぐりの感想をふたりに聞いてみました。

(シミズさん)瓦って命が吹き込まれてますよね。僕は今までは建物に目が行きがちだったんですが、瓦みたいな小さなものにも、職人が伝統を受け継ぎながら新しくいろんなデザインや技術を学んで、一つひとつこだわりを持ってつくられたんだって思いました。

(スミカさん)私もこれまで飾りぐらいにしか見てなかったんです。でも、なにかしら意味が込められてつくられてるんだなって、はじめて知りました。

そう言ってもらえ、めっちゃうれしい。思い切って瓦めぐりを提案して良かったです。

それから2週間が経ち、わっきぃさんに会う機会がありました。気になっていた「ちょんまげ」と「キャラクター」の瓦について質問してみます。まずは「ちょんまげ」の瓦から。これっていったい、なんなのでしょう。

これは、鳥衾(とりぶすま)という鬼瓦の上に飾る瓦だね。ここに鳥をとまらせて他の部分に鳥のフンを落とされないようにするためのものという説もあるらしいけど、鳥衾の上に串(スパイク)が刺してあって鳥がとまれないようになっていることもあるから、鳥がとまるためというよりは装飾のためのものじゃないかな。

さすが、“瓦を追うひと”!一瞬で答えが返ってきました。鳥がとまるためにつくったのに、鳥よけをつけるなんて、なんだか不思議です。

では、あの「キャラクター」の瓦はどうでしょう。
「なにこれ!?これは見たことないな!」
なんと!わっきぃさんですらわからない瓦だったとは、驚きです。ところが、数日後に連絡があり、

あの瓦、巻き貝じゃない?
見た目から“巻き貝っぽいな”と思って調べてみたら、瑞浪って巻き貝の化石がいっぱい採れるらしい。しかも、巻き貝の化石をご神体にしてるお寺まであった!
>瑞浪化石産地|瑞浪市観光協会
>【第三十一番】恵日山 慈照寺|瑞浪市観光協会
ってことは、この家でもお守りとして屋根に載せてたんじゃないかな。

なにかのキャラクターだと思っていた瓦の正体は巻き貝なんですね。昔の人たちにとって瑞浪市のような森林の地域に海の生き物の化石があることは、とても神秘的だったのではないでしょうか。

それにしても、私が必死に探してもなにも出てこなかったのに、どうやって見つけたのでしょうか。尋ねると「いや、『巻き貝 大湫』とかで検索したらすぐに見つかったよ」とサラッと言われてしまいました。「瓦 大鍬 キャラクター」で検索していた私とは目の付けどころが大違いです。

私にはわっきぃさんほどの知識や洞察力があるわけではありません。だけど、いつもより視点を少し上に向けるだけで、そこには友人たちとまちを楽しむ、新しい方法がありました。感想を語り合うと、その人らしさが見られるのも楽しみのひとつ。瓦だけではなく、目の前にあるものもきっと同じことが言えるはずです。また機会があれば友人たちと、いろんな見方で思い出をつくりたいと思います。

写真/ジェイ

ジェイ

大阪府生まれ。小学生で神奈川県へ。東京の大学を卒業し、就職後、名古屋へ配属される。子どもの頃から引っ越しを繰り返し、地元愛を感じられる場所を持たないため、愛知を地元にすべく、大ナゴヤ大学のボランティアスタッフとして活動中。
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