toggle
大ナゴヤノート.
2026年04月29日

移ろう時間と車窓の景色に思いをめぐらす

現在、名古屋駅周辺ではリニア中央新幹線の開業に向けて工事が進んでいる。クレーン車越しに見上げるビル群、閉店した百貨店。そんなまちを眺め、変わっていく景色に年月の移ろいを感じる。もしリニアが開業したら、名古屋からの移動はどうなるだろう。駅を行き交う電車を見ながら、これまでの旅路に思いをめぐらせた。

10代の頃はJRで岡山や東京へよく行ったものだ。冬休みに在来線を乗り継いで中国地方の祖母の家へ行ったときは、米原に差し掛かるとあたり一面が雪景色に変わった。乗換駅のホームで寒さに震えた記憶がある。

青春18きっぷを使いひとりで出かけた東京への道中では、ふと目に入った舞阪町弁天島の鳥居に惹かれてふらりと途中下車した。日本人としての憧れなのか富士山を望むとテンションが上がる。
電車にゆられる心地良さについうたたねをして乗り過ごしそうになったことも。マーカーを引いた時刻表を片手に、車窓からの景色を眺めて目的地までの長い道のりを楽しんだ。

駅弁と漫画を買って新幹線に乗ったのは中学生の頃だったか。下を向いていると酔うため、ときおり顔を上げて窓の外に目をやる。他の席では出張帰りとおぼしきスーツ姿の男性が、スルメをつまみながらビールを飲んでいた。乗客たちは思い思いの方法で過ごす。

出発地から目的地までのあいだ。職場と家を結ぶ通勤ならば、仕事からプライベートへゆるやかに気持ちを切り替える息抜きの時間となる。技術の進歩で移動にかかる時間は短縮された。けれど私たちは、効率化によって生み出されたゆとりをうまく使えているかしら。できた余白に予定を詰め込み、さらに忙しくしていやしないか。こんなことを考えてしまうのは、あらゆるものが目まぐるしく流れていく現代のスピードに少し疲れているせいかもしれない。

最近、東京行きの新幹線に乗ったときのこと。隣の席のビジネスマンは仕事のメール対応なのかパソコンを開いて作業していた。スマホの操作にいそしんでいた私は、富士山を見ただろうか。

リニア中央新幹線が開業すれば、最短で名古屋から品川までを40分で結ぶという。車内で弁当を広げるには慌ただしいくらいの短時間。車窓から見る景色も飛ぶように速く流れそう。

かくいう私はリニア開業を心待ちにしている。移動時間が短くなればより気軽にイベントに参加したり、友人に会いにいったりと、遠征する機会を増やせるのでは。日々便利になっていく世の中でその恩恵は享受しよう。しかし、車窓に映る景色をのんびり楽しむような心の余白を忘れないでいたいと思う。

写真:榊原あかね

榊原 あかね

名古屋市緑区育ち。旅行会社に勤めていたが退職し一児の母となる。現在は食べ歩き好きが高じてグルメライターとして活動中。名古屋で子育てをする中で地元に愛着を感じ、地域に貢献したいと漠然と思うように。大ナゴヤノート.では、生活者目線でまちの魅力を伝えたい。
この著者が書いた他の記事もどうぞ