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大ナゴヤノート.
2019年05月29日

続けることが好きを育む
-瓦を追うひと 脇田佑希子-

「好きなことはなんですか」と聞かれると、答えに詰まってしまう。

でも、長く続いている行動が好きなことと考えると、無理に「好き」を見つけようとしなくてもいいのかもしれません。

この記事で紹介する脇田佑希子さんは、瓦の中でも軒丸瓦(軒先に用いる丸瓦のこと)が好きで、10年以上面白い瓦を見つけて記録し続けています。

脇田さん

最初は、まち歩きついでに撮っていた瓦の写真。10年以上続けるうちに、Instagramで瓦について発信するなど活動内容が変わっていきます。まちの魅力を発信する活動をしている「大ナゴヤ大学」で、先生として教えるなんてことも。

どのように瓦と出会い、そして情報発信をするまでに至ったのか。そこまでの道のりを聞きました。

どちらかというとインドア派だった脇田さん。2006年頃から体を動かしたいと思い立ち、建物やまちの風景を見るのが好きで、ウォーキングイベントに参加し始めたそうです。新しい場所に行く度に発見があり、楽しくて定期的に参加する中で、瓦と出会います。

2009年に、ウォーキングイベントのコースの途中、解説のために立っていた方からの「ここの神社は、瓦にいろいろな細工がしてあるんだよ」という何気ない一言をきいてから軒丸瓦に目がいくようになりました。すると、お寺や神社によってさまざまな模様や文字がかかれていて、面白いなと。

そこからは瓦葺きの建物の前を通りがかる度に軒先を見上げるようになりました。

そのまち特有のマンホールを撮る人は、たくさんいるじゃないですか。それが瓦になったという感覚です。

瓦

自分が何に興味があるのかを知るのは難しい、そう感じたことはありませんか?

最初の一歩として直感で面白いと感じたら何も考えず、まずは行動に移して、たくさん情報に触れると良いのかもしれません。

一方で、好きでい続けるには、モチベーションの維持も必要になってきます。どのように続けてきたのでしょうか。

最初の頃は、瓦を見つけた場所は記録せずに、瓦だけを撮っていました。でも、続けていくうちに、だんだん“瓦熱”が冷めてきた時期もありました。

軒丸瓦の模様の違いの面白さはあるけれど、後で見返しても「これどこだっけ?」とか、これを撮り続けてどうするんだろう、みたいな気持ちになってきて…。

モチベーションの高低に波がある中、次の行動を起こします。

お寺の看板など場所がわかる写真も撮って、瓦とセットで投稿していけば、自分の記録にもなるし、瓦に興味がある人が見たら楽しんでくれるかなと思いInstagramを始めました。

土・日に出かけたときに、お寺や神社などをまわり、平日に1日ひとつぐらいのペースで投稿しています。Instagramにアップした場所は、500ヵ所を超えました。

本当は、奈良とか京都も行きたいのですがまだ行けてないんですよね。ネタが尽きないので、まだまだ続けますよ。

Instagramを始めて、どのような心境の変化があったのでしょうか。

最初の頃は、お寺の名前や場所、市町村名ぐらいしか書いてなかったのですが、自分で瓦を観察して気づいたポイントや後で調べてわかった歴史などを書くようになりました。伝えなきゃというほどではないけれど、瓦をより深く知っていくうちに、誰かに伝えたくなっていきました。

また、Instagramを見てくれる人が増えていったのもモチベーションが続いた理由のひとつです。

インスタ

誰かに見てもらうことを意識して発信するうちに、書く内容も変わり、瓦の見つけ方など行動も変化していきます。

敷地内には今は使われていない瓦が置かれていることや、同じ文字が書いてある軒丸瓦でもフォントの違いがあることに気づきます。訪ねた建物を正面から見て“はい、おしまい”ではなく、建物の周りを1周して見たり、地面に目を向けたりと、くまなく探すようになったのだとか。

地面にある瓦

脇田さんが最初にInstagramに投稿した写真は、大須にある「首題寺」の瓦の写真。初めて訪れたときは見落としていたけれど、再び訪れたときに、本堂の屋根と塀とで瓦の「首」のフォントの違いに気づいたそう。

首瓦

首瓦2

時間軸でみても、瓦は変化していきます。

例えば、栄国寺にあるここの瓦は、新しくなったんですよね。前は、卍の瓦でした。建て替えのタイミングで瓦のデザインが変わることはあります。オリジナルの模様入りになったところもあれば、逆に量産品に替わってしまったところも。

訪れる度に、新しい発見があるので、飽きないのかもしれないです。

栄国寺

まちの中には、たくさんのモノやコトがあります。少しでも面白いと思ったら、写真を撮ってSNSに投稿してみたり、周りの人に面白さを話したり、感覚や直感を大事にしつつ、まずはそれを自分なりに面白がってみる。

続けていくうちに、自分なりの視点が養われ、より主体的に楽しめるようになっていくのかもしれません。

結果として、それが「好きなこと」と呼ばれるのではないでしょうか。

「大ナゴヤノート.」には、まちの人に連れられて、一緒に「いいな」を見つける「オープンノート.」という取り組みもあります。

脇田さんが、まちの人の一言をきっかけに瓦と出会ったように、まちの人と一緒に歩く中で、自分なりの気づきと出会う場となったら良いなと思い始めました。

脇田さんがナビゲーターとして登場する「オープンノート.」も実施しますので、お楽しみに!

大野 嵩明

名古屋市西区生まれ。社会人インターンシップで石川県七尾市にあるまちづくり会社での活動を通じて、地域の魅力を伝えていく仕事の楽しさと大変さを知る。名古屋に戻ってからは、ナゴヤの魅力を発信し、面白くしていこうと活動。まちをみる視点を日々更新中。
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