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大ナゴヤノート.
2020年01月22日

新年のかずのこと私の「魚屋さん」。

変わらずそこにあるお店

毎年、お正月の楽しみにしているものがあります。
それは、かずのこ。地元の魚屋さんが仕込んだ、醤油漬けのかずのこは、我が家の新年の食卓に欠かせない一品です。その魚屋さんとは、実は結構長いお付き合い。中高生の頃から母がそこで買ってくるサバの味噌煮が大好きで、自分が家庭を持った後も、引き続きお世話になっています。もう約20年、当たり前に足を運んでいますが、ふと考えてみるとすごく貴重な存在だと思うんですよね。

お店の入り口を開けると、いつも迎えてくれるのは、かすかな潮の香りと『いらっしゃい、見てってね』と威勢のいいおばちゃんの声。まちの魚屋さんらしく、ショーケースには丸々1匹の魚より、食卓にすぐ並べられる刺身や、あとは焼くばかりの味付けされた切り身が多めに並んでいる。その前には手作りの煮付けやお惣菜も。何があるかは仕入れによってまちまち。月に数回、「こないだ美味しかったあれ、今日もあるかな」なんて足を運び、あればうれしいし、ないのもまたうれしい。珍しい魚を見つければ試してみたくなる。おばちゃんの味付けとともに、まだ知らない魚介の味と出会えるお店です。

そんな偶然の出会いを楽しめる魚屋さんが、年末に必ず仕込む醤油漬けのかずのこ。楽しみにしている人も多いようで、予約しておかなかったばかりにあわや買いそこねそうになった年もありました。今年も確実にゲットしようと12月28日のお昼に予約へ。お正月向けの商品がいくつも並び、ショーケースには塩漬けのかずのこもありました。「今年は醤油漬けやります?」と聞くと、『明日!明日仕込むから、欲しかったらとっとくよ』とのお答え。「じゃあ、2000円分お願いします」『なにさん?小林さんね。明日でも明後日でも、いつでも来て!』と名前のメモもとらずに予約完了。「去年も美味しかったから、楽しみですわ」『みんな醤油漬けがいいって言うんだよね。はい、じゃあ、よろしく!』。こんなやりとりもなんだか心地よい。大晦日に受け取ったかずのこは、期待通りの変わらぬ味しさでした。「やっぱりこの味付けだよね」と無事に新年の訪れを感じさせてくれます。

「はい、魚屋です」

予約した日、おばちゃんは店の電話に『はい、魚屋です』と出ていました。「魚屋です」ってどこの魚屋だよ(笑)とつっこみたくなった後、ふと自分も「魚屋さん」って呼んでいたことに気づきました。そう気づいた今もなお、名前も知らずに通っている魚屋さん。スーパーやドラッグストアですべてそろう今、もしかしたらまちの人みんなが知っているお店ではないかもしれません。でも、知っている人にとって、ここは「魚屋さん」。そういえば、「八百屋さん」「肉屋さん」「酒屋さん」と呼んでいるお店はないなぁ。私のなかで「魚屋さんといえばココ」という場所。来年も再来年もずっとあってほしいと願ったお正月でした。

私の住むまちの自慢のひとつです。

写真:小林優太

小林優太

小林優太

愛知県あま市出身。キャッチフレーズは「あま市と歴史とラッコを愛す」。普段は、コピーライターだったり、大学講師だったり、まちづくりに関わる人だったり。大ナゴヤ大学では、2012年からボランティアスタッフ、授業コーディネーターなどで活動。
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