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大ナゴヤノート.
2020年02月05日

やりたいことを、やってみる。「平野醸造」の蔵開きから感じた、ありのままの姿勢

やりたいことをやっている人の周りには、自然と人が集まってくる。

そんなことを、2019年12月に岐阜県郡上市大和町にある「平野醸造」の蔵開き会場で開催された、大ナゴヤ大学の授業「“メイドイン・オールグジョー”な日本酒ができたよ!~郡上・大和の蔵開きに参加しよう~」に参加して感じました。

平野醸造がある郡上は、三方を山に囲まれ湧き水が豊かな地です。そんな土地で、水を守りながらお酒を造ってきました。創業は明治初期で、約130年の歴史があります。2018年に初めて蔵開きを開催し、今回で2回目。授業では、この蔵開きが実現するきっかけとなった中心人物、平野醸造杜氏の日置義浩さんと、蔵開き実行委員会のメンバーの小澤陽祐さんに、これまでの取り組みについてお話しいただきました。

最初に、日置さんから蔵開きに対する想いを伺います。

(日置さん)
うちの酒蔵では、好適米を他県から買い、酒造りの責任者でもある杜氏も外から来てもらい酒を造っていました。2017年に、販売状況の厳しさもあり足元を見直す中で、社員で杜氏をしようとなり、そこで私が手を挙げました。

一方通行の酒造りでなく、興味のある人に来てもらい意見を聞きながら酒造りをしていく。そんな、「ひらかれた蔵」にしていきたいです。

蔵開きには、地域の人もたくさん関わっています。日置さんの想いを形にするきっかけを作ったのが、蔵開き実行委員のひとりでもあり、普段は千葉県松戸市でオーガニックなコーヒー豆だけを自社焙煎し販売する「SLOW COFFEE」を経営している小澤さんです。

2016年から、妻の出身地である郡上市大和町に自宅を建て、会社がある千葉県松戸市との二拠点生活をしています。小澤さんに、蔵開きを実現するに至った経緯を伺いました。

(小澤さん)
あるとき日置さんが、もっと気楽に来ることができる「ひらかれた蔵」にしていきたいという想いを話してくれました。私の会社がある千葉県の酒蔵「寺田本家」では、お蔵フェスタを毎年開催しています。そこで、コーヒー屋として出店していた経験もあったので、日置さんに「ここでお蔵フェスタやりましょう!」と提案して、蔵開きを一緒に立ち上げることになったのです。

実行委員会のメンバーは、蔵人だけでなく地域の方々も関わり、会社という枠組みを越えてひらいていこうとする姿勢がありました。

小澤さん自身も、郡上の水の魅力を発信したいと、2017年に「郡上発!水出しプロジェクト」を立ち上げています。郡上で「やってみる」を実践している人です。

(小澤さん)
東日本大震災の直後、千葉県の浄水場から放射能が検出され、水道水が飲めなくなる事態に直面したとき、お義父さんが、湧き水をタンクに入れ郡上から送ってくれたのです。水が届いて、助かった、生きていけると安堵しました。この気持ちを、コーヒーを通していつか表現したいと思い続け、縁あって郡上に移住したタイミングで、多くの方の力をお借りして、「郡上発!水出しプロジェクト」として形にしました。

日本酒を造る日置さん、コーヒー会社を営む小澤さん。郡上の水という共通点でつながり、お互いのやりたいことが重なり合い、新しいプロジェクトが自然と生まれていく。そんな、挑戦を受け入れる土壌が、郡上にはあるのかもしれません。

今回の蔵開きに合わせて、新しい日本酒ブランド「風土酒」のお披露目もありました。風土酒は、水・米・杜氏など、すべて郡上のものにこだわり、その土地の木桶とその木桶にすみつく菌で醸したお酒。この米は、田植え作業など地域内外の方を巻き込んで作られています。また、風土酒というブランドコンセプトも、蔵人だけではなく、愛知や東京在住の人も関わりながら作られたそうです。

蔵開き以外にも「ひらかれた蔵」になるために新しい仲間を増やそうと、郡上市が移住促進策の一環として始めた、郡上を舞台に郡上らしい挑戦を生み出す「郡上カンパニー」という取り組みに応募。そこで採択され、「ひらかれた蔵」プロジェクトとして関わるメンバーを、郡上カンパニーを通じて募集したのだとか。

日置さんとともに「ひらかれた蔵」を目指し、風土酒など新しいブランドの開発に取り組むメンバーの白木彩智さんに、お話を聞きました。

(白木さん)
私は岐阜県羽島市生まれで、大学から東京に行き、今は地域の課題をデザインの力で解決する仕事をしています。大学時代からの友人で、郡上カンパニーのディレクターでもある岡野春樹くんに誘ってもらい、郡上カンパニーの立ち上げと共創ワークショップの設計・運営を3年間お手伝いしてきました。3年目の今年は自分もプロジェクトをやってみようと、「ひらかれた蔵」プロジェクトに手を挙げました。

一緒にやってみて、日置さんのことを慕う地元の人や小澤さんなどの移住者が蔵開きに関わるなど、私たちが関わる前から挑戦してきた人たちがやってきたことが、一つひとつつながり、大きな結果が出始めている、そんなタイミングなのだと感じています。

蔵開きでは、名古屋で仕事をしながら、週末のタイミングで郡上に通っているという菊池颯花さんと出会いました。牡蠣やコーヒーの販売ブースを手伝っていたので、お客さんが途切れたタイミングで立ち話。

(菊池さん)
普段は、人材紹介の会社で働いていて、もっと自然な形で人と人がつながったり、双方にとってわくわくする生き方や働き方が作れたりしたらいいなと考えていたタイミングで、郡上カンパニーに参加しました。

ただ遊びに来るだけでは出会えない、郡上に根ざして仕事と暮らしと遊びに境目なく「遊ぶように生きている」人たちと出会い、「こんな生き方、かっこいい!」と引き込まれ、今は、ほぼ毎週郡上に通っています。

2018年に、蔵をひらいていこうと、始めた蔵開き。2019年は、たくさんの人を巻き込みながら日本酒を造るプロジェクトが生まれるなど、着実に輪が広がっていました。

自分の中にある「やってみたい」という声に耳を傾け、正直に行動していく。一人ひとりがありのままの姿勢でいるからこそ、人が自然と集まってくるのではないでしょうか。

「やってみたい」と思ったことを、まずは誰かに話してみる。そこから、何か始まるかもしれません。

写真:大野嵩明

嵩明大野

大野 嵩明

名古屋市西区生まれ。社会人インターンシップで石川県七尾市にあるまちづくり会社での活動を通じて、地域の魅力を伝えていく仕事の楽しさと大変さを知る。再び名古屋に戻り、ナゴヤの魅力を発信し、面白くしていこうと活動中している。まちをみる視点を日々更新中。
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