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大ナゴヤノート.
2019年03月06日

ひとりの好きを、みんなの面白いに。夢中で追いかけるモザイク壁画の世界
-モザイク愛好家 森上千穂-

好きなものを熱く語る人が好きです。

そういう人が増えたら世の中楽しいだろうなと思います。

この記事でご紹介する森上千穂さんが話してくれる「モザイク壁画」のお話もただただ面白い。

え、モザイク壁画ってなに?という方は、説明するより写真を見ていただくのがいいでしょう。検索エンジンで「モザイク壁画」と検索してみてください。

小さなタイルや大理石やガラスで作られた壁画などが見つかると思います。そして、ふとまちなかで意識してみると、駅の構内やビルの壁などにモザイク壁画が見つかるはずです。

森上さんは「モザイク愛好家」を名乗り、名古屋市内のモザイク壁画を巡るツアーの企画、ガイドとして活動しています。モザイク壁画の魅力を語る市民としてマスメディアからも注目されるほど。地域の人たちと一緒に、まちにモザイクアートを作るボランティア活動にも力を入れています。

「パートで働く普通の主婦だった」という数年前から、雑誌に寄稿したり、新聞やテレビから取材されたり、その道の玄人のひとりとして知られるようになった今。愛好家としてのここまでの道のりをお聞きしました。

 

モザイク壁画との出会いは、何気ない日常の一場面だったと言います。

6年ほど前に、タイルを貼り付けて作るキッチンペーパーホルダーのキットを買ったのがきっかけでした。なかなか上手にできたんですよ(笑)もっと作りたくなって、「タイル」「モザイク」で検索をかけてみると、多治見のモザイクアート教室や、常滑のINAXライブミュージアムなど、行ってみたい場所がたくさん見つかって。調べて、気になるところへ行ってを繰り返すうちに、徐々に夢中になっていましたね。

あるとき、タイルの業界誌にモザイク壁画の連載が載っていると知り、バックナンバーも全部集めました。それから名古屋のモザイク壁画を探すようになり、実際にその場所へ行ってみました。CBC会館やカゴメの社屋、伏見駅や矢場町駅。いつも歩いている道の傍らに有名な作家さんの、それぞれにストーリーのある作品が見つかるんですよね。銀行の中にあるモザイク壁画もあって、いつでも見に行けるように口座を開いちゃいました(笑)

でも、旧大名古屋ビルヂングの作品は、建て替えのためになくなってしまっていて、実物を見られませんでした。モザイク壁画は、ある日見られなくなってしまう。中日ビルの天井画も見られなくなってしまいますよね。ずっとあるものじゃないと気づいたとき、この魅力を伝えなくちゃと衝動に駆られたんです。

「誰かに伝えないと」。でも、伝え方が分からなかった。もやもやと考えながら、友人とまちへ出かけるとお気に入りのモザイク壁画を紹介していたそうです。そんなとき見つけたのが、大ナゴヤ大学の授業コーディネーター育成講座でした。

大ナゴヤ大学は前から知っていて、いつか参加したいなと思っていました。「授業を作る人募集」という案内を見て、モザイク壁画について発信する方法のヒントがあるかもしれないと思って。その予感は大当たりでした。

大ナゴヤ大学の人たちは、モザイク壁画の話を「面白いですね」と熱心に聞いてくれました。実は、友達以外の人にも興味を持ってもらえるか不安もあったんですが、自信になりましたね。私のしたいことは、どうやらまち歩きという方法で実現できそうだと。

授業づくりをサポートしてくれた先輩コーディネーターの青木さんには、「これを見せたい」という思いをイベントとして成立させる助言をたくさんもらいました。そして、2014年末に名古屋のモザイク壁画を巡るまち歩きを、モザイク彫刻家の碧亜希子先生と一緒に開催できました。やりたかったことが形になって本当にうれしかったです。

森上さんの情熱は、「また聞きたい」「他の人にも聞いてもらいたい」と周りの人を動かしました。やっとかめ文化祭、大ナゴヤツアーズなどのまちを巡るコンテンツで、度々ガイドを依頼されるようになります。

ガイドになりたいと思ったことはないんです。でも、お話しする機会が増えると、もっと伝えたいと思うようになりました。今はモザイク壁画の情報を得ると、次のツアーにどう組み込もうかなと考えてワクワクしちゃうんですよ。

今後は他の都市でもやりたいですし、欲を言えばまち歩きとは違う発信もしてみたいですね。モザイク壁画の情報源はあまりないので、もっとたくさんの人に知ってもらえる機会を作りたいです。

これほど夢中になれるモザイク壁画の魅力はどこにあるのだろう?

モザイク壁画って、小さなピースを一つひとつ人が並べてあの大きな作品を作るんですよ。 気に入らなければやり直しもあって、その手間と時間を思うだけでもすごくないですか? じっと眺めていると、当時制作に関わった人たち、建物を造った人たち、そこを利用した人たちの思いや時代の勢いみたいなものも伝わってくるようで。 もともとその建物のために造られたものなので、建物と運命を共にするという儚さも魅力なのかも。 だから今ある姿を見ておきたいし、見ておいて欲しいんですよね。

芸術家や批評家とはまた違う、モザイク愛好家の森上さんが語る等身大のお話は、モザイク壁画への愛にあふれていて聞いているだけで楽しくなります。「好き」を伝えようと一歩踏み出したことで、周りの人はその面白さに気づき、自分自身ももっと面白がっている。そんな姿がとっても素敵で、憧れます。

あなたもぜひ森上さんと一緒にモザイク壁画を巡ってみてください。

小林優太

愛知県あま市出身。キャッチフレーズは「あま市と歴史とラッコを愛す」。普段は、コピーライターだったり、大学講師だったり、まちづくりに関わる人だったり。大ナゴヤ大学では、2012年からボランティアスタッフ、授業コーディネーターなどで活動。
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