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大ナゴヤノート.
2020年04月01日

挑戦しながら見つける、今の自分のバランス -アクセサリー作家 松下亜美-

私たちの毎日は、いろんな時間からできています。
仕事、遊び、勉強、子育て、家事…。家族や友人と過ごしたり、ひとりでなにかに没頭したり。それぞれの暮らしのバランスがあるでしょう。

春は、出会いに旅立ちに、変化が起こる季節。節目の時期に、今のあなたの毎日のバランスを振り返りませんか。
お話を聞いたのは、「くらげ屋 UVレジンアクセサリー工房」の松下亜美さん。まちのマルシェで出会えるアクセサリー作家さんです。変化とポジティブに向き合いながら挑戦してきた彼女のエピソードをのぞいてみます。

子育てだけの毎日の先に、想像もしなかった起業が

「くらげみたいな生き方がうらやましい」。
お店の屋号の由来を聞くと、松下さんはこう答えてくれました。

学生時代から、つい分刻みでカツカツの生活を送りがちでした。子どもが生まれたとき、そんな余裕のない自分には絶対に戻らないと決めて。くらげって、フワフワしているじゃないですか。くらげみたいにフワフワした気持ちも大切に生きようと思って「くらげ屋」と名付けました。

屋号に目指す生き方への思いが込められています。話を聞いていくと、ここで語られる「フワフワした気持ち」が、彼女の決断や行動の原点になっていると感じました。

愛知県あま市の自宅を拠点に、UVレジンアクセサリーの製造・販売と、ワークショップの開催を事業としている松下さん。透明感のある艶やかな質感が特徴のUVレジンを使い、キラキラ輝く彩り豊かなアクセサリーを制作しています。地元のマルシェへの出店を中心に事業展開し、2019年8月で創業3年を迎えました。一方で、くらげ屋の経営者であると同時に、6歳と0歳の2児のママでもあります。

起業のきっかけは、お子さんが生まれたことでした。育児にかかりっきりで、一緒に息抜きできる友人もいない…。「このままじゃまずい。趣味でも持とう」と始めたのがレジンアクセサリーづくり。さらに、マルシェにも興味があり、半年後にはハンドメイドアクセサリーでの出店を決めました。自分のつくったアクセサリーを買って、身につけてくれる人がいる。チャレンジは自信につながり、売り上げも徐々に上がっていきました。
すると、1年ほど経った頃、親しいマルシェ仲間から起業を勧められます。「くらげ屋」を事業者として登録する。不安や悩みを抱えながらも、いろいろな人に背中を押されて決断したといいます。

起業するなんて考えたこともなくて。趣味の延長で私なんかが起業するって言ったら笑われるんじゃないかと思ったんです。お客様の信頼や安心を高められるとは分かっても、なかなか踏み出せませんでした。
でも、ひとりで悩んでいたのは間違いだったんです。地元の商工会に相談しに行ったら、「起業ですか、おめでとうございます!」とすごく親身にアドバイスしてもらえました。友達もみんな「すごいね!応援するよ!」と言ってくれる人ばかりで。自分で自分を下げて悩んでいただけでした。今、起業に悩む人がいたら、「考えすぎずに挑戦してみなよ」って伝えたいですね。

こうして2016年8月に「くらげ屋 UVレジンアクセサリー工房」が改めてスタートしました。対面販売を基本に、オーダーメイドの要望にも可能な限り応えています。UVレジンのワークショップも、お客様の要望に応えて始めたもの。リクエストには多少無茶でも最大限応えるのが信条なのだとか。「いつでも会えるくらげ屋さん」としてファンも増えています。

夜に仕事はしないと決めた両立のバランス

「子育てしながら自分の事業も動かすなんて大変だろうな」と思う人も多いのではないでしょうか。松下さんの家庭との向き合い方も、くらげ屋を営みながら徐々に変わっていきました。

長男が保育園に通う前は、寝かしつけた後に作業をしていました。でも、やっぱり夜は眠くて。子どもが夜中に目を覚ましたら、隣にいてあげたいと思ったんです。だから、今は夜中に仕事はしません。「全然寝てないんじゃない?」と心配してくれる人もいるんですけど、実はそんなことなくて。夜9時くらいに子どもより先に寝ているときもありますよ(笑)継続できるように無理はしないって決めました。

朝、子どもを送り出して、家事をする。その後、10時頃からお昼過ぎまでが仕事の時間。子どもが帰ってきたら作業しない。アイデアが浮かんだらすぐにメモしておき、少しでも効率的に制作できる工夫は常に考えておく。これが今の生活のリズムです。また、家族についてはこんな話も。

起業したら、子どもにママ以外の姿を見せたい思いはありました。楽しんで仕事をしているのが伝わったのか、よくマルシェについてきて手伝ってくれます。「ママのつくるものはかわいい」って自慢してくれるんですよ。主人も快く応援してくれています。くらげ屋の名刺は、デザイン関係の仕事をしている主人に、私のアイデアをカタチにしてもらったものです。起業したことで、家族に感謝する機会も増えましたね。

「無理はしない」と決めてでき上がった仕事と家庭のバランス。両方に対して「どうありたいか」を見つめ直して実現していくスタンスに、「くらげみたいにフワフワした気持ち」を持つというのがどういうことか垣間見える気がします。

焦らず、諦めず、満足せず、探し続ける「ちょうどいい今」

今後の目標を聞くと、「地元を盛り上げる活動」「防犯ボランティア」「合気道」「手話」など、いろいろなものが出てきました。実は、すでにマルシェの企画や地域情報誌の編集にも関わっているそうです。では、活動のフィールドは広がっていくばかりかというと、「今がちょうどいい状態」だと感じているとも語ります。

くらげ屋と家庭を両立するには、いい具合の活動量だと思うんです。やってみたいことはいっぱいあるし、子育てがひと段落したら変わるのかもしれないけど、今はこのままでいい。ちょうどいい状態を維持していくのも簡単じゃないですよね。

「やりたいこと」「できること」はライフステージによっても移り変わっていくものです。私自身も、就職、転職、結婚、独立といった出来事を経て、時間の使い方や価値観が変わったと実感しています。そして、その時々で「やりたいけれど、できない」とモヤモヤした気持ちを抱えることもありました。子育てしながら起業し、チャレンジを続ける松下さんのエピソードには、そんなモヤモヤを晴らすヒントがいっぱいあるように感じます。

振り返ると、ずっとやりたいことを避けて通ってきました。大学を選ぶときも、美大に進学したかったけど、「お金にならないよ」と周りに言われて諦めちゃった…。自己肯定感を高められなくて、「自分なんか」ってよく思っていました。
くらげ屋を始めてからは、「お客様が買ってくれるのに自分が自信を持たないのは失礼だ」と考えるようになって。自分のアクセサリーで喜んでもらえたらうれしい。もっと喜んでもらいたいから、要望をいただいたら「嫌です」「できません」は言いたくない。やろうと決めたことをしているうちに、やってみたいことを実行するのが好きだった自分にも改めて気づけました。「おかえり、あの頃の私」って感じですね。

終始、笑顔で話してくれた松下さん。話を聞いていると、なんだかこちらもワクワクしてきます。焦らず、諦めず、満足はしない。昨日とは違う自分に戸惑ったり、受け入れたりしながら、「こうなりたい」未来の自分への期待を抱き、行動する。暮らしの最適なバランスは、そんな姿勢から見つかるのかもしれません。どこへ行くのか分からないのも楽しみながら前進していく。くらげみたいに生きるって、そういうことなのかな。

「どんなバランスで生きるのか」。ライフステージは違っても、誰もが向き合うテーマなのではないかと思います。この春からの毎日を改めて考えるきっかけになったらうれしいです。

>くらげ屋の情報は下記のリンクから
くらげ屋 UVレジンアクセサリー工房 ブログ instagram

写真提供/くらげ屋 UVレジンアクセサリー工房

小林優太

小林優太

愛知県あま市出身。キャッチフレーズは「あま市と歴史とラッコを愛す」。普段は、コピーライターだったり、大学講師だったり、まちづくりに関わる人だったり。大ナゴヤ大学では、2012年からボランティアスタッフ、授業コーディネーターなどで活動。
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