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大ナゴヤノート.
2019年08月07日

「まるはちの日」にまるはちな瓦を見よう

8月8日は「まるはちの日」ですね。
“まるはち”って…?と思われた方。
名古屋市内のマンホールや、隣接市町から名古屋市に入るときの市境の標識などを思い出してみてください。

そう、〇に漢数字の八、名古屋市の市章です。

市章が制定されたのは1907年10月のこと。この市章制定から88年を記念して、1996年(平成8年)に8月8日が「まるはちの日」と制定されました。なぜ「〇に八」なのかというと、名古屋市のwebサイトによれば

尾張徳川家の合印として用いられていたマークを採用することになったといわれています。
(中略)「丸は無限に広がる力、また八は末広がりで発展を示す」というお目出度いマークであり、名古屋の歴史を大切にしながら、新たな発展を期そうという思いがあったようです。

とのこと。

ところで、8月8日はもうひとつ、「屋根の日」でもあります。その由来は、「八」が屋根の形に似ていることや、「八」を重ねるのが瓦を重ねるのに通じることだとか。

…というわけで、まるはちの日でもあり屋根の日でもある8月8日に、屋根を見上げて“まるはち”な瓦を探してみよう!というのが今日のお話。実は、まちにあふれる屋根瓦には「まるはち」をたくさん見つけることができます。

まずは名古屋市章の“まるはち”そのものが入った瓦が見られる場所をご紹介しましょう。それは、2018年3月にオープンした金シャチ横丁。

飲食店やお土産屋さんの店舗の屋根には、“まるはち”入りの鬼瓦が。しかしながら、残念なことに私の好きな軒丸瓦に市章が入ったものはないようです。

では、軒丸瓦の“まるはち”を探しに行きましょう。
軒“まるはち”瓦に出逢えそうな場所……それはズバリ「八」のつくところ。

例えば、「幡神社」と呼ばれる神社がありますね(八幡信仰の神社を指し、「八幡宮」「八幡社」などと呼ばれるところもあります)。
神社本庁が1990~1995年に実施した「全国神社祭祀祭礼総合調査」の結果によると、全国の神社約49,000社のうち最も多いのが八幡信仰の神社で、7,817社あるようです。また、神社・寺院のポータルサイト「八百万の神」によれば、八幡系列の神社は、愛知県に394社、岐阜県に298社、三重県に47社あるとのこと(2019年8月確認)。なので、皆さんの生活圏にも1社ぐらいあるのではないでしょうか。

大治町花常東屋敷にある花常八幡神社を訪ねてみると――

ありました、軒丸瓦に「八」の文字。

日進市折戸町の八幡社にはこんな“まるはち”。

「八」のつく神社といえば剣神社もあります(「八剣社」とも。また「剣」の字が旧字体の場合もあります)。先ほどと同じく「八百万の神」を参照すると、八剣系列の神社は愛知県に51社、岐阜県に18社、三重県に5社あるようです(2019年8月確認)。

こちらは大治町西條南屋敷にある八剱社。

同じ漢数字の「八」でも、こうして並べて見ると瓦によって書体が違いますね。書体が違うということは、瓦の型が違うということ。いつつくられたのかな、どんな職人さんがつくったのかな、そんなところまで想いを馳せるのも一興です。

さて、私の写真ストックにはまだまだ“まるはち”瓦があるのですが、ただ「八」の書体の違いを見比べて面白がろうというだけでは終わりませんよ。

千種区池下にある蝮ヶ池八幡宮をご存じでしょうか。
幡宮」なので、“まるはち”瓦がありそうな予感。

ほーらあったあった、「八」の軒丸瓦…と思いきや!近寄って見てみると……おや?

鳩!? 2羽の鳩が見つめ合っているではありませんか!!

この向かい合う鳩で八の字を模した意匠は「向かい鳩(対い鳩)」と呼ばれ、八幡神社では瓦に限らず扁額や提灯などにもしばしば見られます。鳩が八幡神の遣いであることにちなんでいるとか。

ところ変わって、こちらは清須市の八剱社。

「八」の字型だけど、1画1画がなんだか不思議な形。しばし観察――真ん中に筋が通っていて、先が尖っている――…剣?

そしてふと頭をよぎったこの場所の名前…「八剱社」。
そうか!八社だから“剣”の「八」なのか!!

八剱社…なぜ「八剱社」という名称なのかなんて考えたこともありませんでしたが、調べてみれば、8本の剱を神体や祭神としているのが八剱社なのだそうです(日本武尊や素戔嗚尊を祭神としているところもあります)。

ここまでご紹介してきたように、“まるはち”瓦に出逢うには、「八」のつく神社が狙い目。八幡神社、八剣神社のほかにも、八柱神社や八王子神社などなど…。
ならば神社にしかないのかな、って?いえいえ、決めつけるのはまだ早いのです。

八事に「八勝館」という料亭がありますね。えぇ、勝館です。

塀の軒丸瓦を見てみると……

お、“まるはち”だ!
しかもよく見れば、かわいい点目が入っているではないですか!

こちらの瓦、最初に見つけたときはただの「八」だとばかり思っていましたが、少し日を置いてまた八勝館の前を通りがかったときに、あら?っと向かい鳩であることに気づきました。そんなふうに、見るたびに新たな発見をすることもままあるので、瓦めぐりはやめられません。

まるはちの日にちなんで、いろいろな“まるはち”瓦をご紹介してみました。皆さんのお住まいや職場・学校の近くに「八」のつく場所はありますか。そこにももしかしたら“まるはち”瓦が隠れているかもしれませんよ*

* 必ずしも「八」のつく神社(八幡神社、八剣社など)に“まるはち”の瓦があるとは限りません。

<この記事で紹介した瓦スポットはコチラ↓>

写真:脇田佑希子、岡村(筆者の瓦めぐり同行者)

脇田 佑希子

愛知県海部郡生まれ。なんちゃって理系のサイエンティスト+編集屋+瓦を追うひと。暇さえあれば軒丸瓦を探しにまちへ繰り出すおさんぽ好き。まちに埋もれたお宝を、人それぞれに発掘できるような“仕掛け”を創りたいと日々思案を重ねている。
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