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大ナゴヤノート.
2022年05月25日

高校時代に芽生えたまちづくりへの思い。岡崎の魅力に出会う新たなきっかけをつくる。
-Scaping OKAZAKI 芝村有紗-

愛知県岡崎市で、足漕ぎ型のキックボードを使ったまちめぐりを広めている「Scaping OKAZAKI(スケーピングオカザキ)」。以前の記事で、私が大ナゴヤ大学の仲間と一緒にこの活動を体験した様子をレポートしました(記事はコチラ)。

発案者は、京都工芸繊維大学大学院2年生(2022年5月時点)の芝村有紗さん。岡崎で生まれ育ち、大学院で学びながらチャレンジしています。Scaping OKAZAKIにどんな思いを込めているのか。立ち上げの経緯や、活動を通じて感じていることなどをお聞きしました。

 

変わりゆく岡崎で、自分なりの挑戦を

芝村さんは、大学時代までを地元の岡崎市で過ごしてきました。名城大学で建築学を専攻し、現在も大学院で建築にまつわる研究をしています。Scaping OKAZAKIのきっかけは、高校時代の経験にありました。

高校生の頃、岡崎の乙川の周りからまちが変わっていくのを感じていたんです。例えば、乙川に架かる殿橋に隣接するスペースに、オシャレなハンバーガー屋さんがゲリラ的に出されていました。「いつか行ってみたい」とずっと興味を引かれていたのですが、大学生になって調べるとまちづくりの一環で試験的に行われていたらしくて。大人たちの楽しそうな取り組みに心惹かれたのが私の原点です。

大学生になった芝村さんは、地域に入り込もうとNPO法人を介してさまざまなボランティアに参加しました。乙川河川敷を使った結婚式などイベントの手伝い。乙川に新しく架けられる橋のネーミングに関する市民アンケートの集計。岡崎のまちを変える取り組みが、どんどん身近なものになり、まちの人たちとのつながりも広がっていきました。

Scaping OKAZAKIの拠点にもさせていただいているゲストハウス「OKAZAKI Micro Hotel ANGLE」さんに集まる人から刺激をもらいました。地域で活動を起こすなど、人生を面白がっている大人が大勢いる。こういう生き方って格好良いなって。そのうちに自分も岡崎でなにかしたいと考えるようになったんです。大学院1年生の秋にクラウドファンディングを利用して企画を立てるという内容のインターンシップに参加しました。そこで提案したのがScaping OKAZAKIのアイデアです。

このインターンシップで高評価を受け、2021年10月から実際にクラウドファンディングを実施。初めての経験に苦労しながらも見事に目標を達成しました。

岡崎の魅力に気づいてもらいたい。そんな私の思いにたくさんの方が共感してくださいました。本当にうれしくて、ご支援いただいた方に感謝しています。

こうしてキックボード購入などの資金を得て、同年11月に活動がスタート。利用者からは「徒歩より遠くまで行けて、自転車よりもまちの景色が見やすい」といった、キックボードの良さを実感する声が寄せられているそうです。2022年5月時点で利用者は延べ約70人。この取り組みに興味を持った仲間も集まり、芝村さん含めて同い年のメンバー4人が活動の中心になっています。さらに、大学時代の建築学科の後輩にキックボードのスタンド製作を依頼するなど、周りの人を巻き込む工夫も仕掛けてきました。
まちづくりに関わる人たちに感化され、「岡崎でなにかしてみたい」と湧き上がった熱意を形にしたのがこのプロジェクトなのです。

ところで、Scaping OKAZAKIの構想はどのように生まれたのでしょう。最初のヒントは大学3年生のときに訪れたデンマークにあったといいます。

デンマークのまちでは、環境に配慮する意識が広まり、多くの市民が移動手段として自転車を利用していました。車と違ってまちの人たちが顔を見合わせて生活できますし、少し停めておいて景色を眺めながら日向ぼっこしたりもできます。都市で遊ぶのにちょうど良いなと感じました。私が訪ねたまちには岡崎のように大きな川があって。岡崎でも徒歩や車とは別の移動手段を活用できるのではと興味を抱きました。

岡崎に合う移動手段。イメージにはまったのがキックボードでした。

岡崎で開催されていた蚤の市でキックボードが展示されていたんです。大人も子どもも楽しそうに乗って遊ぶ姿を見てピーンとひらめいて。デンマークの都市ほど広くはない岡崎にはキックボードが合いそう。乙川周辺には面白いスポットが点在しているので、それらをつなぐツールとして最適だと考えました。実際に乗った人の声を聞くと、岡崎とキックボードはやっぱり相性が良かったようです。

歩くと遠いけれど車で行くほどの距離ではない。そのくらいの距離感で魅力が集まる地域に合うツールだと語ります。

 

まちの良さを見つけ、共有してほしい

Scaping OKAZAKIの活動の先にどんな未来を描いているのでしょう。岡崎のまちへの思いと活動の展望を聞いてみました。

岡崎の人はよく、他市や他県の人に「岡崎って良いまちだよ」とすすめています。これからも自信を持って発信できるまちであり、訪れた人も一緒に「やっぱり良いまちだね」と共感できるまちであってほしい。その魅力を知るきっかけとしてキックボードを活用したいです。最初に設置した4台がもっと使われるようになり、たくさんの方に協力してもらえる基盤を整えていくのが今の目標です。

キックボードを使って自分なりの岡崎の魅力を見つけ、お互いに「ここが良かった、あそこが良かった」とシェアできる。こうしたシーンがもっと生まれることを願って取り組んでいます。ちなみに、芝村さんのおすすめスポットは乙川沿いの景色。夕方にライトアップされた橋を横目に走るのが気持ち良いそうですよ。

高校生の頃から岡崎の変化を目にし、大学時代にはボランティアなどで地域に入り込んできた芝村さん。まちの多彩な魅力を掘り起こしてきた経験が、Scaping OKAZAKIの活動の根底にあるように感じました。地元への愛着を胸に、学生時代の学びや気づきを活かした活動を展開するチャレンジ。そんな彼女の熱意と姿が、「自分もなにかしてみたい」と次に続く人を生み出していくのではないでしょうか。

写真/小林優太
写真提供/芝村有紗

>Scaping OKAZAKIの情報は下記のリンクから
Instagram Twitter

小林優太

愛知県あま市出身。キャッチフレーズは「あま市と歴史とラッコを愛す」。普段は、コピーライターだったり、大学講師だったり、まちづくりに関わる人だったり。大ナゴヤ大学では、2012年からボランティアスタッフ、授業コーディネーターなどで活動。
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