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大ナゴヤノート.
2019年12月11日

まったく新しい“1”が生まれる、1と1のかけ算
-喫茶ニューポピー・尾藤さんが取り組む、コラボレーションの可能性-

10月の終わりのある日。以前取材させていただいた喫茶ニューポピーのマスター・尾藤さんからこんな連絡がありました。(前回の記事はこちら

11月2日に、大垣で枡の会社さんとのコラボイベントを開催します! オリジナルでブレンドしたコーヒーを枡で提供するので、時間があればぜひ来てください。

コーヒーと枡! なんだか気になる組み合わせです。11月3日には喫茶ニューポピーの出店が決まっていた「マーケット日和」に顔を出すべく会場の各務原へ足を運ぼうと考えていた私。せっかくならそれぞれのイベントに伺い、尾藤さんのコラボレーションやイベント出店に対する考えを聞いてみようと思い立ちました。ということで、「大ナゴヤノート.」のエディターのジェイくんとともに、大垣と各務原へ行ってきました!

コラボその1・枡×コーヒー=まったく新しい飲み物!?

11月2日のイベント会場は、大垣駅から徒歩5分の場所にある「masu cafe(枡カフェ)」。運営する大橋量器は、長年大垣市で枡を製造してきた老舗企業で、最近では建物の内装材で枡を提供するなど、柔軟な発想で枡の可能性を広げています。masu cafeの内装やテーブルなどにも枡がふんだんに使われていて、個性が光っていると感じました。

イベント当日、ディスプレイに喫茶ニューポピーのロゴマークがあしらわれた枡が並んでいました。

今回のイベントでふるまわれた「枡プレッソ」は、無垢のヒノキで作られた枡の香りを楽しみながら味わうコーヒーです。ブレンドは「ダーク」「ミディアム」「マイルド」の3種類。これは飲み比べないと!と、私はミディアム、ジェイくんはマイルドを注文しました。

1杯1杯丁寧にコーヒーが淹れられます。

一合枡に注がれたコーヒーをひとくち飲んで驚いたのが香りです。ヒノキ独特の清涼感ある香りとコーヒーの香ばしい香りが交互にやってきます。コーヒーではない、まったく新しい飲み物を飲んでいるよう。正直、コーヒーとヒノキはそれぞれ良い香りなので、その分ケンカしてしまわないかドキドキしていました。そんな心配を忘れてしまうほどの鮮烈な味わいです。ミディアムはコーヒーとヒノキの香りが交互に感じられたのに対して、マイルドはふたつの香りの一体感が強いなど、ブレンドごとに印象がガラッと変わるのも、すごく面白い体験でした。

コーヒーが飲みやすいように、枡の内側には丸みをもたせる加工が施されています。

ちなみに枡の材料となるヒノキが分布するのは、主に日本。ヒノキの香りに「日本らしさ」を感じる外国人も少なくないとか。枡プレッソは「日本らしさが味わえるコーヒー」と言えるのかもしれませんね。枡は持ち帰りOKだったので、ありがたくいただきました。

コラボその2・“福祉”を真ん中に置いてお互いに手を取り合う

日付は変わって11月3日。各務原市の学びの森で開催された「マーケット日和」は、異なるお店や団体がコラボレーションする形で出店することが決まりとなっているイベントです。喫茶ニューポピーのコラボレーションの相手役となったのは名古屋市中村区にあるNPO法人「ひょうたんカフェ」。ここではさまざまな障がいがある利用者さんが働き、手作りのドーナッツやクッキー、雑貨を販売しています。喫茶ニューポピーにも「産地と福祉をつなげる」をコンセプトに置く「トリココーヒー」があります。焙煎時に割れたり潰れたりした「欠点豆」を仕分けるハンドピック(仕分け作業)を障がい者の方が行っているのが特徴です。

お互いに福祉に関わりがあることが縁となり、自然と「いつかコラボしよう!」となっていったといいます。喫茶ニューポピーのブースでは、ひょうたんカフェの利用者さんが描いたイラストをパッケージに使った「トリココーヒー」の新商品や、テイクアウトのコーヒーを販売。ブースは終日大盛況で、多くの人が商品を手に取ったりお菓子やコーヒーに舌鼓を打ったりしていました。

新商品はデカフェコーヒーとコールドブリュー(水出し)コーヒー。

ひょうたんカフェのブースで目を引いたのがコースター。欠点豆を使って染められた糸で布地を織り、コーヒーの生豆が入っていた麻袋を組み合わせて作られています。本来なら処分されるはずの豆や麻袋も、ひょうたんカフェの手にかかると素敵な商品に生まれ変わるのですね。今回はコーヒーで染めた糸のみで布が織られていましたが、他の色の糸とも組み合わせていろんな柄ができたら面白そう!と思いました。

コラボ商品のひとつ・手織りコースター。一つひとつ柄が異なるので、自分のお気に入りを探す人も。

 

出店名は「ひょうたんポピー」。どちらも植物だからでしょうか、とてもなじんでいます。

コラボレーションは挑戦のきっかけ。1と1をかけ合わせた先にあるものとは?

2日にわたって異なるコラボレーションの形を見せてもらえたのは、とても新鮮に映りました。と同時に、とても大変そうだなとも思いました。コラボレーションを形にするにはそれなりに体力が必要と思いますが、尾藤さんにとってどんなことがモチベーションとなっているのでしょうか。

枡プレッソが生まれたのも、ひょうたんカフェさんとのコラボ出店ができたのも、どちらも偶然の出会いがご縁となってできたもの。何かしらコラボレーションするとき、きっかけはさまざまだけれど、大事にしているのは「面白くて、うちらしい」と思えるか。やるからには喫茶ニューポピーが関わるからこそできるものにしたいし、関わる人にも楽しんでもらいたいって思っています。

枡プレッソの開発は、顔を合わせる機会が重なった大橋量器の社員さんから「おいしいコーヒーを提供したい」と相談されたことがきっかけでした。その際、普段のmasu cafeでは樹脂塗工された枡が使われていることを知った尾藤さんは、「日本酒は無垢材の枡で、木の香りを楽しみながら味わうのに」と思ったそうです。そこで「日本酒でやっていることを、コーヒーでやろう!」と決意。当初はオリジナルブレンドを1種類開発する予定でしたが、ブレンドの方向性を精査するために試作した3種類がそれぞれ個性的だったため、思い切ってすべてを商品にするべくブラッシュアップを進めることになりました。

時折真剣な表情をのぞかせながらも、コラボについて楽しく語る尾藤さん。

コラボには発見がたくさんあるし、楽しみもある。でもそれだけじゃ実はダメで「その先」が見えるかどうかも重要。一回こっきりにするのではなく、将来的にどう展開できるかを考えるのも大切にしているポイントです。

枡プレッソのお披露目イベントでの「枡のお持ち帰り」も「その先」につながりました。実はイベントでの反響が大きかったことから、masu cafeでは通常営業時にも枡プレッソが提供されることに。さらに、今回のコラボで生まれた3種類のブレンドをドリップパックとして商品化することが決定しました。2020年2月ごろ発売予定で、枡を持ち帰った方は、今度は自宅で楽しむことができるようになります。枡、持ち帰って良かった〜! 

現在は、顔なじみの映像作家さんとともに喫茶ニューポピーオリジナルのミュージックビデオを作成したり、ラジオ番組とともに新しいコーヒーの開発をスタートしたりと、新たなコラボを進めている尾藤さん。周りの人との縁を大切にしながら「喫茶ニューポピーとしてできることは何か」「その先にどんなものが見えるのか」を考え、新たなチャレンジにトライし続ける姿はとても素敵です。次はどんなコラボが生まれるのか、今からワクワクしてしまいます!

 

写真/いとうえん

伊藤 成美

名古屋市生まれ、瀬戸市育ち。デザイナーや玩具の企画開発アシスタント、学習塾教材制作などを経て、縁あってwebメディア運営会社のライター職に就く。インタビュー記事の執筆を中心に経験を積んだ後、フリーランスに。大ナゴヤ大学では、ボラスタや授業コーディネーターとして活動中。
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