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大ナゴヤノート.
2019年10月30日

便利であれば、人が集まればOK? 時代とともに変わるまちの顔・商店街について考える

生まれ育ったまちにも、進学で上京したまちにもあったもの。旅先でも気づけばブラブラと歩いてしまう。振り返れば、私の思い出の片隅にはいつも商店街がありました。この記事を書いている自宅のベランダからも、地元の商店街のアーケードが臨めます。

小さなお店が隣り合う商店街では、お店同士がときに競争したり協力したりして、にぎわいをつくってきました。ひとつのお店が店じまいをしても、次に別の人がお店を始めて新しい明かりが灯れば、その表情は少しずつ変わっていきます。小学生の私が駄菓子を買って遊び回っていた商店街も、今では観光客向けのお店が増えて子どもたちの姿はあまり見られなくなりました。

商店だけでなく、以前は映画館もありました(小さな頃、ここで平成ゴジラシリーズを見た記憶が…)

ところで「商店街」と聞いて何を思い浮かべますか? 辞書を引けば「商店の並んでいる町の一画や通り」との一文が。確かにそのとおりなのですが、商店街と聞いて思い出すのは、もう少し具体的なモチーフではないかと思います。例えば「アーケード」「看板」「街灯」などなど。

最近だと、これらよりも先に思い浮かんでくるものがあると思います。それは「シャッター」。シャッターが降りた店舗が大半を占める商店街は珍しくなくなり、「シャッター通り」という言葉も生まれました。ある日を境に、開けられることがなくなったシャッター。それがひとつ、またひとつと増えていくのを目にすると、だんだんとまちの明かりが吹き消されていくようにも思えます。

でも今はショッピングモールだってネットショッピングだってあるし、そっちのほうが安く買い物ができるよね。
便利なものは世の中にたくさんあるんだから、シャッター通りが増えるのもしょうがないんじゃないの?

こんな意見を口にする人は、きっと少なくないでしょう。確かに利便性だけに目を向ければ、これもひとつの考え方です。でも、全部をそれでくくってしまうのはちょっとさみしい気もします。便利な場所って「用事がないと行けない(行かなくていい)」とも取れてしまうので。何もなくとも立ち寄れて、誰もが好き好きに時間を過ごす。それが積み重なって、にぎわいや交流につながるのではないかと思えるのです。

とはいえ、いくら店舗があっても「中身」がなければ、何も生まれません。閉ざされたシャッターを開けて、中身をつくる。そんな取り組みが全国各地で展開されています。名古屋市内では「商店街やまちについて考え、これからの店鋪をつくる」をテーマとするワークショップ「商店街OPEN」を2018年度より実施。2019年度プログラムは堀田商店街と柴田商店街にある空き店舗の活用方法を、4ヵ月にわたって練り上げていくそうです。

10月27日にそのプレイベントとして大ナゴヤ大学の授業「面白がり屋、集まれ!商店街ツアーと空き店舗見学。〜柴田商店街〜」が開催され、私はボランティアスタッフとして参加しました。柴田エリアに足を運ぶのは生まれて初めてだったので、これもいい機会と授業スタート前に周辺を歩いてみると、多くのお店が閉まっています。もう何年も手つかずと思える、古ぼけた店舗も少なくありません。

授業当日は日曜日で、大通り沿いは車や自転車、人の通行は多かったように思います。

でも少し離れると、閑散とした雰囲気に…。

それでも、昔ながらの書体が使われた看板や一昔前にはよく見かけたショーウインドーなど、懐かしく心惹かれるものもたくさんあり、最盛期の活気の残り香がふと伝わってきたように感じました。また、夜になると歓楽街の顔をのぞかせるのも柴田商店街の特徴のひとつです。パブやスナック、ライブハウスなどが点在しているので、日が落ちたら違った印象を受けるのでしょうね。

以前は衣料品店だった「ミセスショップつるや」。テント部分の曲線が可愛らしいです。

柴田商店街では年間を通じて季節のイベントを催していて、イベント開催時には多くのお客さんでにぎわっているそうです。こう聞くと「にぎわいづくりができているのでは?」と思うかもしれませんが、実際には商店の前に屋台が並ぶために「今日はお祭りだから」と、当日は臨時休業するケースも…。商店街を盛り上げる一役を担うはずのイベントが結局休業を招いているのは残念に思えます。授業の中でも「大きな花火を打ち上げるのではなく、小さな線香花火を毎日絶やさないようにしたい」との声が挙がっていました。

このように「商店街の活性化」「空き店舗の活用」といっても、単に「新しいお店(または事業)を立ち上げればOK」ではなく、昔からお店を営んできた方やまちの歴史とのつながりを考えたり、利用する上では建物の大家さんとの関係性を調整したりする必要もあります。
(大家さんやそのご家族が2階部分で生活しているケースも珍しくないそうです)

やること、考えるべきことはたくさんあります。4ヵ月でどのようなものが生み出せるのかはわかりませんが、授業に参加した生徒さんの中には「商店街OPEN」への参画に意欲を示されている方もいらっしゃいました。11月からスタートするこのワークショップを通じて商店街が、そしてまちがどう変わっていくのか。もしかしたら、大きな変化を生み出すかもしれません。そう思うと、とてもワクワクした気持ちになりました。

授業からの帰り道。私はいつもどおり地元の商店街を通り抜けていました。ふと掲示コーナーに目をやると、「空き店舗活用」の文字が。どうやら私の地元でも、商店街の空き店舗活用の取り組みが新たにスタートするようです。
新しい動きが、ここかしこで始まっています。あなたのまちでも、何かが胎動し始めているかもしれませんよ。

伊藤 成美

名古屋市生まれ、瀬戸市育ち。デザイナーや玩具の企画開発アシスタント、学習塾教材制作などを経て、縁あってwebメディア運営会社のライター職に就く。インタビュー記事の執筆を中心に経験を積んだ後、フリーランスに。大ナゴヤ大学では、ボラスタや授業コーディネーターとして活動中。
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