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大ナゴヤノート.
2020年04月29日

平日の昼間。徒歩10分圏内で、見えていなかったまちに出会う

考えてみれば、これまで平日の昼間を地元で過ごすなんてこと、あったかしら。

愛知県に緊急事態宣言が発出され、在宅勤務となって数日。自宅で粛々と仕事に向き合う中で日課となったのが、昼間の散歩です。ずっと屋内にいるのは心身ともによろしくないもの。予防対策を万全に、密集エリアを避けて15〜20分ほど近所を散歩しています。

最初はすぐに飽きてしまうのではと思っていたのですが、これがそうでもなく。進学を機に地元を離れ、数年前に戻ってきてからも地元をじっくり歩く時間なんてつくってきませんでした。なので、「え、こんなところにこんなお店があったんだ」「この道、知らない間に整備されていたんだな」と、短時間でもいろんな発見があります。トップ写真の巨大な猫のオブジェ「涅槃大招き猫 Big Nehan」も、自宅から5分もしないところに設置されているのですが、実は今回の散歩で初めて存在を知りました(笑)
*ネット検索してみたところ、この場所に涅槃大招き猫が設置されたのはどうやら2019年10月頃のよう…正確な時期をご存じの方、お教えください〜!

ちなみに涅槃大招き猫の奥にあるのは「招き猫ミュージアム」。私の地元・瀬戸では戦後「セト・ノベルティ」と呼ばれる海外輸出向けの置物の生産がさかんになり、陶製の招き猫もたくさんつくられてきたそうです。今(2020.4.29現在)は残念ながら休館中ですが、再開したら一度足を運んでみようかな。

毎朝歩いていた道沿いにも、知らないスポットを見つけました。私がその道を使う時間帯は閉まっていて気づかなかったのですが、なんと外国人アーティストのアトリエがあったのです。普段の生活ではのぞけなかった“内側”を初めて目にすることができて、ちょっとにんまり。

一見すると、民家のガレージを思わせますが、中では作家さんが立体作品を制作中でした(お邪魔しないようこっそり撮影…)

普段歩いている道にも新発見がある。「気づいてないだけで、いろいろあるものだなぁ」と感心しながら歩いてたら、ふと友人の言葉を思い出しました。

「なにもない」って聞かされていたけれど、いろいろあるじゃん。

以前、友人が私の家に泊まったときに口にした、このひとこと。友人は生まれも育ちも東京で、私からしたら「都会の人」です。そんな友人から見れば、ザ・田舎のわが地元なんて「なにもない」と疑いもしません。けれど友人はこう続けました。

私の地元には駅前には大型スーパーとかはあるけれど、そこから離れたらマンションやビルが並んでいるだけ。なにもないし、地元でなにか楽しもうとか思ったことないよ。ここはいろいろあって、面白いよ。

見る人が違えば「なにもない」なんてことはない。「なにもない」というフィルターを通して私がまちを見ていたと気づかせてくれた友人の言葉をなぞっていたら、自分の中にある「なにもない」フィルターが、少しずつ薄くなってきているのでは、と感じました。今は足しげく通うお店ができて、これから行きたい場所、誰かを連れていきたい場所もたくさんあります。

この通り沿いには、素敵なパン屋やカフェがあります。お気に入りエリアのひとつ。

それらを教えてくれたのは、戻ってきてからできた友人や家族です。人が、まちを教えてくれる。当たり前のことを改めて実感しました。いまだに「なにもない」という言葉が口をついて出ることはありますが、続けて「私が面白いと思うものはあるよ!」と言えているのではと思います。

働く環境が変わったことで「平日の顔」を目にできたのは、私にとってちょっとした収穫でした。まちを見るフィルターに、また新たな変化が生まれそうな気がします。そんなことを考えながら、明日も変わらず散歩に励みます。
(あ、仕事もします。笑)

写真/いとうえん

伊藤 成美

名古屋市生まれ、瀬戸市育ち。デザイナーや玩具の企画開発アシスタント、学習塾教材制作などを経て、縁あってwebメディア運営会社のライター職に就く。インタビュー記事の執筆を中心に経験を積んだ後、フリーランスに。大ナゴヤ大学では、ボラスタや授業コーディネーターとして活動中。
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