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大ナゴヤノート.
2020年09月02日

瓦を通してめぐり会ったまちの移り変わり
-誰かの“見方”を拝借して、まちをのぞいてみる-

先日公開された「まちの見方を真似すると-大ナゴヤノート.エディターが瓦を探してみた-」は、大ナゴヤノート.のエディターが「瓦」をテーマにまちを切り取り、それを瓦女子・わっきぃさん(脇田さん)が瓦愛にあふれる視点で編集するといった、新しい手法でつくる記事でした。これまで、意識して瓦に目を向けることなんてなかった私が取り上げたのは、地元・瀬戸の深川神社の瓦。そして実はこのとき、もうひとつ気になる瓦を見つけていたのです。それがこちら。

なんかいる!

しかも屋根の四隅すべてにいる!

瓦…というより人形?のようなものがあるのは、瀬戸川沿いにある和菓子屋「川村屋賀栄」。私も昔からよく知っていて、「川村屋さん」と呼んできました。建物全体も趣があって素敵です。ただ、屋根をじっくり見たのははじめてでした。

いったいナニモノ!? わっきぃさんならご存じかしらと写真をお見せしたら、すぐに「これはショウキさまだね」とのお答えが。ショウキさま…?字面がまったく思い浮かばないです…。

鍾馗(ショウキ)さまっていうのは道教の神様で、それは魔除けの願いを込めた飾り瓦のひとつだよ。
ちなみに鍾馗さまは、お隣さんやお向かいさんの家に鬼瓦があると、それを睨みつけるように据えるらしい。「鬼より強い」って言われててね。昔、京都のある家の人が謎の病気になっちゃって、「どうも向かいの建物の鬼瓦が邪気を周りに散らしているようだ」と、鬼瓦に対抗するように鍾馗さまを据えたら病気が治ったっていう逸話がルーツみたい。
逆に、隣近所の屋根に先に鍾馗さまがいるときは目を合わさないようにして据えるんだとか。奥ゆかしいというかなんというか(笑)

写真ではわかりづらいのですが、実物をよーく見ると、表情がちょっとコミカルでかわいらしくも感じられます(鍾馗さまがどんな表情をしているか、気になる人はぜひ「鍾馗 瓦」で検索してみてください)。でも、鬼よりも強い神様とは!予想だにしていなかった答えに、思わず目を見開いてしまいました。

川村屋さんに問い合わせたところ、この建物が建てられたのは大正時代。瓦葺きも当時のままだと伝え聞いているとのことでした。とすると、昔はお隣さんやお向かいさんの家の鬼瓦を睨みつけていたのかもしれません。「昔は」と前置きしたのは理由があります。現在の川村屋さんの両隣や裏手には、それらしき建物が残っていないのです。


小さな頃の記憶をたどっても、周りの風景はよく思い出せません。気になるなぁ〜と唸っていたら、別のエディターから「昔の地図を見てみたら?瀬戸市の図書館に住宅地図が所蔵されているみたいだよ」と助言されました。確かに、地図を見ればどんな建物があったのかがわかるはず!さっそく、瀬戸市立図書館へ足を運びます。
余談ですが、大ナゴヤノート.ではこうやってエディターどうしが情報交換する場面がよく見られます(笑)

司書さんに「瀬戸市の地図を、一番古いものから10年ごとに見せてください」とお願いし、1963年、1974年、1984年、1994年、2003年、2014年の地図を用意していただきました。新しいものから順に目を通してみます。2014年と2003年の地図は、多少の違いはあるものの、現在のまちの様子と大きな差はないように感じました。次に1984年と1974年の地図を見比べてみると、「駐車場」の文字が書かれているのは1984年だけ。おそらく川村屋さん周辺の駐車場は、1980年代から増え始めたのでしょう。

さらにさかのぼって1963年の地図を見てみると、大きな違いが。川村屋さんのある一画に、陶器店、文具店、工務店、履物屋など、いろいろな商店がひしめき合うように並んでいるではないですか。住宅と店舗が半々くらいの現在と比べたら、とてもにぎわっていたのだろうなと思いました。

1963年の地図を描き写してみたら、改めてお店の多さにびっくり!

川村屋さんの裏手に位置する、ひときわ大きな面積を占める部分に書かれていたのは「魚幸 料理」の文字。近隣に同じ名前のお店もなく、当時の痕跡をたどることはできませんが、敷地の規模からして、私は料亭だったのではないかと推測しました。現在「魚幸 料理」があったとされる場所は、駐車場になっています。

もしかしたらここにあった建物の屋根に、鬼瓦があった…?

川村屋さんの鍾馗さま。昔は、周りの建物の鬼瓦に睨みをきかせたり、他の鍾馗さまから目をそらしたりしていたのかも。そして今は、まちの移り変わりを見守ってくださっているのかしら。そんな神様がいると思ったら、なんだかうれしい気持ちになりました。

それにしても、瓦を探していたら神様に出会えるなんて。飾り瓦というものも今回はじめて知りましたし、それぞれに謂れがあると思うと、自然と建物の屋根と瓦に視線が。あら、もしかしてこれからも、瓦に注目する日々は続いていく…?(笑)

写真・作画:伊藤成美

伊藤 成美

名古屋市生まれ、瀬戸市育ち。デザイナーや玩具の企画開発アシスタント、学習塾教材制作などを経て、縁あってwebメディア運営会社のライター職に就く。インタビュー記事の執筆を中心に経験を積んだ後、フリーランスに。大ナゴヤ大学では、ボラスタや授業コーディネーターとして活動中。
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