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大ナゴヤノート.
2020年07月08日

円空と前田利家の足跡が見つかる荒子観音。「観音さま」とまちをめぐるvol.3

「観音さま」をめぐってみようと思い立ったのは昨年4月。
笠寺観音甚目寺観音、ふたつの観音をご紹介してから随分時間が空きましたが、久しぶりに「観音さま」を訪ねてみました。

今回は、名古屋市中川区の荒子観音へ。
笠寺観音、甚目寺観音と同じく、名古屋城ができた際に尾張を守護する観音として選ばれた尾張四観音のひとつ。毎年節分には、恵方となる観音がにぎわうことで知られています。2020年は荒子観音が恵方の年。福豆を求めてたくさんの参拝者が訪れたようです。
近年は、毎月開かれる「荒子円空市」の噂をちらほらと耳にする機会もあり、「地域の憩いの場となっている観音さまなのだろう」という印象を持っていました。けれど、荒子観音のイメージはそれくらい。少し予習しておこうと、愛知県図書館で名古屋市や中川区の郷土史をチェックしてから行くことに。ひとりでまちをめぐる際、図書館から目的地へという流れが、私の定番になりつつあります(参考にした文献は最後にまとめて記載)。

荒子観音山門。仁王門とも呼ばれます。

さて、予習した知識を携えて荒子観音へやってきました。中川区の歴史によると、かつてこのあたりには荒子村という村があり、「荒子」という地名には野山を開拓した場所という意味合いがあるそうです。

荒子観音の正式名称は「浄海山円龍院観音寺」。729年に、泰澄和尚によって寺院の歴史が始まり、741年に自性上人が開山したとされます。本尊の聖観世音菩薩は泰澄和尚作と言い伝えられているもの。
南側の山門をくぐると、正面に本堂、左手に二重の多宝塔が目に入ります。この多宝塔は国の重要文化財。1536年に建てられた、名古屋市内に現存する最古の木造建造物です。

国の重要文化財に指定されている多宝塔。

荒子観音に関する文献、そして現地でも、前田利家と円空というふたりの人物の名前がたびたび目に飛び込んできます。どちらも社会の教科書や資料集にも載っている人物ですよね。

前田利家は、「加賀百万石の大大名」「織田信長の腹心であり豊臣秀吉の盟友」「戦国を代表する槍の名手」など、数々の逸話を残してきた武将。彼は、今の中川区で生まれたとされ、1569年に当時この地にあった荒子城(利家の父・利昌が築城)の城主となりました。荒子観音から徒歩5分ほどの場所には、荒子城跡でもある冨士権現天満宮があり、「前田利家卿誕生之遺址」と記された石碑も。

冨士権現天満宮にある、前田利家の生誕地だと示す石碑。

荒子観音の歴史では、寺運が衰えていた1576年に、利家が本堂再建のための寄進をしたと語られています。これは、江戸時代に尾張四観音として数えられる以前のこと。歴史にタラレバはないものの、もし利家が再建を助けなければ、今の荒子観音はなかったのかもしれませんね。
荒子観音から冨士権現天満宮に向かう道中、足元に「犬千代ルート」と書かれた道標を見つけました。「犬千代」は若き日の利家の名前。まちで語り継がれる存在であるとうかがえます。荒子観音を訪れた際は、犬千代ルートを辿ってみるのもオススメ。

荒子観音周辺で道案内してくれる「犬千代ルート」のマーク。

もうひとりのキーパーソン円空。ナタの彫り跡が特徴的な「円空仏」で知られる江戸時代の修行僧です。12万体の仏像を彫るとの大願をたてた円空の作品の一部が荒子観音に残っています。記述によれば、1657年頃、当時の住職が山門の仁王像を円空に依頼したのが、荒子観音とのご縁でした。立派な木曽のヒノキでつくられた一対の仁王像は、現在も山門に収められています(山門のガラスの映り込みもあり、残念ながら写真は撮れませんでした)。ナタの跡は豪快に刻まれながらも、少し頭でっかちに思える像のバランスにどこか愛らしさも感じる仁王像です。

円空の彫った仁王像をガラスごしですが間近に見られます。

1972年には、仁王像の余材で彫ったといわれる1,200体の円空仏が多宝塔から見つかりました。それらは現在、毎月第2土曜日に一般公開されています。
え、円空仏の写真ですか?なんと私が訪ねたのは第1土曜日…。見事にタイミングを外し、その姿は拝めませんでした。まぁ、こうして次の楽しみができるのも、ふらりとまちをめぐる醍醐味のひとつとさせていただけましたら(笑)

 

荒子観音では、今も多くの人に愛されるふたりの人物の足跡を発見しました。円空が残した仁王像と円空仏がどんなものかは、ぜひご自身の目で確かめてみてください(私も改めて一般公開に足を運ぼうと思います)。
次はどこの観音をめぐろうか。おそらく、尾張四観音の最後のひとつかな。「ここもチェックするといいよ!」という情報もお待ちしております。素敵な「観音さま」をぜひ教えてください!

 

新型コロナウイルスの影響で円空仏の公開を一時中止していましたが、2020年6月から再開されています。公開状況は荒子観音までお問い合わせを。

 

>参考文献
中川区老人クラブ連合会「中川区の昔をたずねて」1980年
山田寂雀「名古屋区史シリーズ② 中川区の歴史」1982年
中川区制施行50周年記念誌編集委員会「中川区史」1987年

写真/小林優太

小林優太

小林優太

愛知県あま市出身。キャッチフレーズは「あま市と歴史とラッコを愛す」。普段は、コピーライターだったり、大学講師だったり、まちづくりに関わる人だったり。大ナゴヤ大学では、2012年からボランティアスタッフ、授業コーディネーターなどで活動。
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